オランダの首都・アムステルダムの街中を走る美しい運河。交通手段だけではなく、生活の場にもなっている運河の上には、お家や劇場など様々な施設がプカプカと浮いている。
でも、浮く猫シェルターはたぶん、ここだけ。
プカプカ水に浮く?!猫シェルター!
「de Poezenboot」、通称キャット・ボート(猫の船)と呼ばれるこの猫シェルター(猫を野良から保護し里親を見つける施設)は、施設がまるごと船になっている。

水面にプカプカ浮いている船の中には、常時50匹程度のネコ達がいる。
そのうちの15匹はこの施設に永住するネコだが、そのほかは里親を探しているネコたち。

ここで暮らすネコたちは、毎日、運河に浮く船の中から街を眺め、時には運河にいる水鳥を威嚇したり狩りのイメージトレーニング(?)をしながら過ごしている。

ネコ好き婦人の保護猫活動から始まった
キャット・ボートの始まりは、約50年前の1966年に地元で「キャット・レディー」(意味:ネコ婦人)と呼ばれていた婦人による保護猫活動。

婦人は大のネコ好きで、路上で暮らすネコを見かねて、自分のお家(陸地)に保護した。しかし、ネコが増えすぎてお家が手狭になってしまった。
当時のアムステルダムは、陸地の住宅価格が高騰していた時期。反対に、水上の住宅では税金もかからなかったため、所得の低い人々が、古い貨物船などを利用して生活しはじめた頃だった。
そのため、ネコ婦人は保護したネコたちを水上のハウスボートを改装した施設に移し、船上ネコ・シャルターが誕生した。

しかし、設立から今までずっと順調だったわけではない。一度は当局に撤退を求められた。ボートが壊れちゃった時もあった。
1987年には正式に非営利団体として運営されるようになり、ネコのためになんども改築をし、ついに2001年に動物保護施設として法的要件を満たして運営ができるようになった。
1人のネコ婦人が始めた保護活動が、こんな形になるなんて、きっと当時は誰も想像していなかっただろう。

みんなの愛と協力で成り立つ船上ネコ・シェルター
設立をしたネコ婦人は、2005年に90歳で亡くなる直前までネコのお世話をし続けた。
現在、キャット・ボートは約25名のボランティア・スタッフによって管理運営がされている。

ネコの里親希望の人でなくても、誰でも入場できることから、今や「ネコ愛好家がアムステルダムで立ち寄りたいナンバーワン・猫スポット」になっている。
入場料はかからないが、立ち寄った多くの観光客が寄付をしていくという。

アムステルダムならではのネコ・スポット。一度は行ってみたいね!
写真:INDIA TODAY